☆アパート営業物語 NO.14

こんにちは シモンズです!

「一度あの土地でプラン図を作ってきます」「参考までに見せてもらうは」「いいプランが出来ましたよ」など、さらに具体的な話が進みますが、踏ん切りがつかない「お父さん」は既にアパートを建てた理事長さんに話しを聞きにいきます。

また、地域の同級生や消防団の仲間たちにいろいろ話しを聞いて、決心が固まってきます。

主権者とは言え、地権者の「お祖父さん」の承諾がないと出来ません。「お祖父さん」たちは相続税の話を聞いているので息子の話には反対はしません。「わしはどうすることも出来んで、息子に任せるわ!」

これで家族からの反対もなく、環境が整いました。やがて営業も佳境を向かえ、クロージングに入ります。次の訪問では場所は座敷の上座で座布団が用意されます。お茶も出ますし、茶菓子も出されます。「お祖父さん」や「お母さん」も横で聞いています。

「お父さん、私どもの提案をご了解いただけますか」「まあ、いつかはやらんといかんでなぁ~」「ありがとうございます。それではここに判子をお願いします」おもむろに「お祖父さん」の実印を取り出し既にお祖父さんが署名した後ろに震えた手で判子を押します。

当時でも4千万円から1億円の建設費となりますので、大きな借金を背負うことになります。地主さんとしてもおそらく人生最大の買い物となるから仕方ありません。アパート建設は見事初受注となりました。

人というのは不思議なものですね。大きな買い物をするお客様、今まで横柄なところも多々ありましたが、判子を押したとたん私のような若造に「よろしくお願いします」と頭を下げる。大きな責任を感じた瞬間でした。

また、次回をお楽しみに。

☆アパート営業物語 NO.13

こんにちは シモンズです!

「今度きたときにゆっくり聞くわぁ~」 きたーーー。やっと真剣に話しを聞くと言ってくれました。

次に訪問すると、「まあぁ、上がれや!」上がり框をついに突破。居間に招かれます。まだ座敷とはいきませんが、奥さんがお茶をだしてくれたりします。すかさず「お母さん、ありがとうございます」と親近感をアピール。

「お父さんが心配している固定資産税もさることながら、将来お祖父さんが亡くなったときの相続税のほうが大変ですよ!」

二年ほど前、平野ノラなる女芸人がブレイクしましたが、彼女が演じていたのがバブルネタ。当時はまさにバブル経済の真っ只中。土地の評価額はうなぎ昇り、相続ともなれば土地は宅地並みに評価されますから、かなりの資産価値となります。

これもネタになっていましたが、都市部では「土地ころがし」がさらに地価を押し上げ、その余波は近郊の整理地にも及びました。

部落の「地主さん」たちの間では、「借金をしとかないと相続税がすごいことになるぞ」と少し間違った知識が広がっていきました。

我われが営業の根幹としているのはこの「相続税」と当面の「固定資産税」。この二つがなければ誰も土地を手放さ(土地の流動化)ないし、アパートやマンションなどの賃貸住宅は出来ない訳です。

相続税対策と固定資産税対策を同時に出来る賃貸住宅の建設を丁寧に説明します。当時はアパートや賃貸マンションを作ればすぐに満室になるほど住宅が求められていましたので、入居に関しては何の心配も要りません。後は建設のための資金繰りや建てた後の管理です。

どうする「お父さん」。それでは次回をお楽しみに。

☆アパート営業物語 NO.12

こんにちは シモンズです!

やっと仕事の話を切り出しましたが、これはまだ玄関先でのやり取りの様子です。

「お父さん」と趣味の話が出来ても座敷には上げてくれません。玄関先の上り框に腰を掛けて、体をねじって話をします。「お父さん」はあぐらをかいています。座布団が出れば最高ですが、まず出していただけません。ましてやお茶などとんでもない話です。

個人を相手に初めての飛び込み営業の仕事をしたのですが、ここまで来るのにも何度も心が折れて、もうやめようと思ったりもしました。

玄関先に座って話ができるまで来ただけでも、新人営業マンとしてはかなりの進歩です。

また、多くのリース建築業者は固定給は安く、成果給(歩合給)制となっています。アパート建築の受注をすれば受注金額に応じて歩合が支給されますが、固定給だけでは生活は苦しくなります。ですから何としてでも契約を上げたいわけですね。

ここは、我慢のしどころ。せっかく仕事の話もできる段階にきました。何度も上がり框で土地活用の話をすることで「お父さん」の関心が膨らみ、警戒心も薄れてくると本音が出てきて、いろんなことに探りを入れてくるようになります。

宅地並み課税でどれくらいの固定資産税が上がるのか? アパートを建てると何がどうなるのか? アパートを建てるにはいくらかかるのか? やはり興味はあり、知りたいばかりです。

こちらも資料やパンフレットを広げ、新人営業マンが社内研修で覚えたばかりのありったけの知識で説明します。

にわか仕込みの知識でも何軒かの地主さんで繰り返し話すことでだんだん板についてきます。いよいよ上がり框を突破する時が来ます。

次回をお楽しみに。

☆アパート営業物語 NO.11

こんにちは シモンズです!

「お父さんのマネをして庭の囲いを作ったら女房がびっくりしてましたよ」「うまいこと作れたかぁ~」やはり日曜大工の話題から雑談で盛り上げ、和んだところでアプローチ。

「そう言えば理事長のところのアパートもいま囲いを作ってますよ。まだ完成前だけどお客さんもついて満室になりましたよ」とアピール。

「この前、畑の世話をするのもえらいわ~って言ってましたけど、アパート建てたらどうですか!」「そんな大きなことようやらんわ、親父の土地だから俺が好きには出来んでなぁ~」「せっかく土地があるのに活用しない手はないですよ。理事長だって畑にしておくのも大変だからこれからはアパートに稼いでもらうわって言ってましたよ」

「理事長のところはたくさん土地があるで、何かやらんと大変だろ~」「お父さんのところも一緒でしょう。どうせやるなら早くやったほうがいいですよ!」「いろんな建設屋が勧めに来るが、アパート建てろと言っても何も分からんし、金もないでうちはできんわ」と牽制球を投げてきます。

周りの地主さんが、一人、また一人とアパートを建て始めるとセールス活動も活発になります。

興味はあるものの、聞くと攻め込まれると思い気を許しません。こちらは「お父さん」が聞かなくても、聞きたがっていると思うことをパンフレットを開いて勝手に話し、さりげなく情報の提供をします。

最初はサラッと切り上げ深追いはしません。また、雑談でお茶を濁し場を和まして本日の営業は終了。こんな営業活動がしばらく続きます。

それでは次回をお楽しみに。

☆アパート営業物語 NO.10

こんにちは シモンズです!

区画整理が進んでくると、整理組合では保留地(事業費用を捻出するため売却する土地)を分譲します。戸建て業者やマンション業者が事業用地を仕入れるため整理組合や個人の地主さんを訪問します。

しかし個人の地主さんたちはなかなか土地を手放そうとはしません。

これを商機ととらえ「リース建築業」という新しい業態が生まれてきました。「土地を売らずに有効活用」を歌い文句に、アパートや賃貸マンション、貸倉庫や貸事務所を建ててテナントに貸すという賃貸事業をおすすめする業者です。

賃貸用の建物を建て、テナントの斡旋も行う不動産業を併設しており、業者に任せれば「地主さん」から「大家さん」に早変わり。
沢山のリース建築(呼び方はいろいろある)業者ができ、各社がシノギを削ることとなりました。

このうちの一つの会社に営業マンとして入社したことが、私が長年住宅関連の仕事に従事するきっかけとなりました。

「お父さん」とは趣味の話で打ち解けてきましたし、「お祖父さん」とは苦労した昔話で気心が知れてくると、そろそろ仕事の話を切り出すタイミングです。

地域の有力者(大地主)さんは整理組合の理事長さんや理事となっており、各業者は特に力を入れて営業活動をします。

こうした有力者さんを落とす(お客さんにする)ことは後の営業が楽になります。理事長さんがあんたの所でやった(アパートを建てた)のならあんたの会社は信用できるとなるわけです。

次回はいよいよ土地活用の話を切り出します。それでは次回をお楽しみに。

☆アパート営業物語 NO.9

こんにちは シモンズです!

もはや資産価値の高い土地持ちとなった「地主さん」たちは、在来の部落内の古い家から、換地を受けた整理地の土地で気に入った場所に新しい自宅を設けることが願望となりました。

また、「お父さん」たちはなまじっか土地があるから年頃になり所帯を持つ息子たちに家を与えなければなりません。家長としての責任が肩に重くのしかかってきます。

考えてみれば、むかし二束三文だった農地は今や打出の小槌。地主さんたちは一筆売ればかなりのお金が手に入ります。また、当時は景気も良く経済も右肩上がりの世の中。区画整理が終わって精算金が入り、皆さんいくらかの現金は持っていました。

やがては自宅を建てることになりますが、これがまた立派な日本建築。入母屋造りの本普請(本建築)、まさに御殿のような家です。

当時はそれを見て、「日本建築の技術の継承はこういった地主さんたちのおかげと言えるのかなぁ~」と思ったものです。

しかしそれはもう少し先の話し。まだ大方の「地主さん」は土地を売ることに抵抗があります。税金のこともよく分からないし、周りの目を気にして様子見しています。先陣を切ってやるだけの度胸がありません。

それに前にもお話ししました、「宅地並み課税」によって固定資産税が大幅に引き上げられることになれば、サラリーマンの「お父さん」たちは自分のサラリーでは払っていけないわけで、いざという時のためにお金を使うこともできず、一歩が踏み出せないのです。

苦しい立場におかれた「お父さん」たちはどうすればいいのでしょうか。

それでは次回をお楽しみに。

☆アパート営業物語 NO.8

こんにちは シモンズです!

地権者で作る土地区画整理組合では、各地主から減歩して得た土地を分譲地として売却し土地区画整理事業の工事費を捻出します。

分譲地は戸建て業者やマンション業者、また個人が購入してだんだん住宅が建ってくるわけですが、商業施設なども誘致しますので5年もすれば結構な町が形成されてきます。しかし、そんな住宅やマンションの間にはまだまだ野菜畑や果樹園が広がっています。

都市部では人口増加に伴って住宅が不足してくるため、通勤圏内の近郊地域で土地の流動化をはかり、宅地を供給するために土地区画整理が行われたわけですが、前にも話したように地主さんにしてみれば、「親から受け継いだ土地は手放せない」と言う思いが強いわけです。

知識や経験のない土地活用(有効利用)には手を出せず、かと言って意味なく売却もできない、とりあえず畑や果樹園にしておけばまだ農地並みの税金(固定資産税)ですから負担が少なくてすみます。この畑や果樹園を「お祖父さん」や「お父さん」たちが世話をしているわけです。

しかし一家の主権者たる「ご主人」たちはやがて来る宅地並み課税(固定資産税の大幅アップ)に頭を悩ませ、また近い将来、地権者である「お祖父さん」が亡くなった時に起こる相続問題が頭をよぎります。

時代によって誕生した「地主さん」たちですが、これからこの土地をどうして守っていけばいいのか見当もつきません。

何かと頭の痛い「お父さん」です。それでは次回をお楽しみに。

☆アパート営業物語 NO.7

こんにちは シモンズです!

区画整理によって100坪から200坪の四角い畑(農地)が誕生しました。

区画整理地では公園や学校用地、また公共施設用地などを確保し、道路が敷かれ下水施設が設けられ電柱が立てられて町を形成するようにインフラが整えられます。

道路や公共用地などに土地を供出(減歩という)して所有面積は減りますが、二束三文だった畑や田んぼが付加価値のある優良宅地へと生まれ変わったのです。

都市化の波は資産価値を上げ所有から利用へ、また住宅用地の供給を目的に不動産(土地)の流動化を促しますが、昔から苦労して土地に執着してきた人たちは「親から受け継いだ土地は手放せない」となり、固定資産税もまだ農地並みのため「お祖父さん」たちは四角い畑で野菜を作り続けます。

こうなると本格的な農業はできませんが、土地を売ることも出来ず、結局畑にするしか成す術がないのです。

売る(土地の流動化)か、建てる(有効利用)か、耕す(農地にしておく)かのうち「耕す」を選び、後に偽装農地と言われるようになります。

農業で生計が立たなくなれば息子さん(後に私が営業するご主人さん)たちは、サラリーマンや自営業で生計を立てなければなりません。
前にも書きましたが、お祖父さんも高齢になり畑の世話が十分に出来なくなると、息子さん(ご主人さん)たちが勤めの休みの日に畑の世話をすることになるのです。

ここで営業のポイントである、建てる(有効利用)を提案していくことになる訳です。

今回はここまで。次回をお楽しみに。

☆アパート営業物語 NO.6

こんにちは シモンズです!

訪問先のお祖父さんとも話しができるようになってきました。自分は隠居して畑の世話をしています。

土地区画整理で宅地化された区画を何筆(土地の単位)も所有する「にわか地主」になったのですが、「自分は百姓(今は差別用語のようです)しか出来ないのでやめれんわ~」と言い、せっせと野菜を作っておられます。

もともと小作農家に生まれ親の背中を見て育った世代。当時の田舎では農業を継ぐしかなく、親と共に小作人として農業に従事していました。

しかし、戦後時代が変わり農地改革(開放)によって小作人だった農家が安く農地(田んぼや畑)を取得することとなり、自分たちの土地で農業を営むことになったのです。

さらに時代は進み世は正に高度経済成長時代を迎え、各地の都市では街に勤めを求めた人たちで人口が増えてきました。
また企業は従業員を確保しやすい都市近郊に工場を設け生産活動を活発化させていくことになるのですが、都市計画によって市街化区域や市街化調整区域が設けられ無秩序な開発を抑制したのです。

都市近郊で農業を営んでいた農家の畑や田んぼにも、この市街化区域の指定がされると健全な街づくりや優良な宅地の供給を目的として、各地で土地区画整理事業が立ち上げられました。ここで農家から「にわか地主」が誕生したのです。

少々かたい話しになりましたね。まだまだ住まいに関する話が出てきませんが、しばらくお付き合いください。

それでは次回をお楽しみに。

☆アパート営業物語 NO.5

こんにちは シモンズです!

お父さん方の共通した悩みが具体的にわかってきました。
各お宅で事情が異なりますので、それぞれのご事情を会話の中からリサーチします。

家族構成やお名前、年齢、健康状態やお勤め先、また趣味など、なんでもいいので訪問した時は何か一つは情報をとってくる。

そんな情報収集の訪問が続きます。さらに外堀を埋めるための大事な作業ですね。

今やご家庭の主権者となっている「お父さん」の先代、つまり「お祖父さん」は実際の名義人(地主さん)でありコミュニケーションはもっとも大事です。戦後の混乱期から激動の時代を生きてこられた方々です。そこに敬意を払って、ご苦労をされてきた昔のことをたずねてみる。

息子さん(ご主人)にはなかなか苦労話はしない(息子も聞かない)ようで、こちらが水を向けると自らいろいろ苦労話をしてくれました。

他人だから話せることも有るもので、らこちらは「お祖父さん」の話に関心を寄せ、相槌を打ちながら聞き入る。ポイントをついて質問する。

「その時お父さん(お祖父さんと話すときもお父さんと呼ぶ)はどうされたんですか!」答えが返ってくる。「なるほど~、それは大変でしたね~。私の親父は少し若いですが、同じような苦労をしたのかな~」などと合いの手を入れて聞き役に徹する。

これでさらに、ご家庭内の問題や悩みのタネが浮き彫りになってきます。

今回はここまで、次回をお楽しみに。